ルーベンス「王の画家にして画家の王」後編【画家】

ペーテル・パウル・ルーベンス。北ヨーロッパにおけるバロック絵画代表者の一人です。ルーベンスと聞いて、連想するのはまずは名作「フランダースの犬」ですよね。

少年ネロが憧れた《キリスト昇架・降架》はとても印象的です。躍動感あふれる劇的な構図と、豪華絢爛の色彩を駆使した作品には誰もが目を奪われます。

「王の画家にして画家の王」と称されたルーベンス。その生涯とは…

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後編

アトリエという名の宮殿

成功の証、名声の館

ルーベンスは1611年にヴァッペル運河近くの屋敷を購入、自ら設計してアトリエを改築していきます。結構時間がかかり1616年にやっと完成。

それは王侯の館に引け劣らない立派で大きな自宅兼工房で、家族想いの彼にとっては、理想の環境だった事でしょう。ルーベンスはその後亡くなるまで、そこで弟子たちと共に多くの作品を制作していく事になります。

彼はまた絵画や美術品のコレクターでもあり、さらに古美術鑑定家としても名を挙げます。

王侯貴族たちの憧れだった、売れ筋の作品を数多くコレクションしていたそうで、アントワープを訪れる芸術家や、王侯貴族たちに進んで公開して見せたので、ヨーロッパ全土で話題になったほどでした。また、美術品の売買取引などで利益を得ていたらしいですよ。

家族の肖像

ルーベンスには娘(クララ・セレナ)と二人の息子(アルベルト、ニコラス)に恵まれました。さらに彼が34歳時、兄のフィリップが亡くなってしまい、幼い子供2人を引き取ります。これは引き取った子供たちの絵です。

《眠る二人の子供》1612-13年頃 東京都国立西洋美術館
《クララ・セレナ・ルーベンスの肖像》1615-16年頃
リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
《マドンナと子》ニーダーザクセン州立博物館
《ニコラス・ルーベンスの肖像》
1625-27年頃 アルベルティーナ美術館
《アルベルトとニコラス》1626年頃
リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
《クララ・セレナ・ルーベンスの肖像》
1620年頃 ルーベンスの家記念館
《イサベラ・ブラントの肖像》
1622年頃 大英博物館

彼とその家族は自宅のアトリエ兼自宅の城で、幸せに生活を送っていたのですが、

1623年、最愛の娘クララ=セレナが12歳の若さで亡くなってしまいました。さらにその3年後ペストで妻イサベラが亡くなってしまいます。

その頃、多忙を極めていたルーベンス。家族想いの彼にとって、相当にショックでつらい日々だったに違いありません…。

この時ルーベンスは49歳でした。

画家として、外交官として

マリー・ド・メディシス

1621年オランダとの休戦協定は終わり、そしてアルベルト公が死去します。その大公妃イサベラ妃はフランス王大后マリー・ド・メディシスから、リュクサンブール宮の装飾についての相談を受けます。

《マリー・ド・メディシスと夫アンリ四世の生涯》を描いた連作24点を、ルーベンスに一任したいとのことで、イサベラ妃もこれに賛成。これがきっかけでイサベラ妃私的外交官として、政治に関与するようになります。

《マルセイユ上陸》1622-25年頃 ルーブル美術館
《マリー・ド・メディシスの摂政統治の至福》
1625年頃 ルーブル美術館
《マリー・ド・メディシスとアンリ4世の代理結婚式》
1622-25年頃 ルーブル美術館
《マリー・ド・メディシス》
1622年頃 プラド美術館
《女王たちの交換》1622-25年頃 ルーブル美術館
《マリー・ド・メディシスとアンリ4世の
リヨンにおける対面》1622-25年頃 ルーブル美術館

平和の使者

イギリスとの和平交渉

各地の宮廷でその存在を知られたルーベンス。彼の存在と使命はさらに政治色を帯びていきました。

ネーデルラント連邦共和国とスペインの間に結ばれていた休戦条約が期限切れを迎えたことで、ルーベンスはイサベラ妃の要請を請け、スペイン領ネーデルラントと、ネーデルラント連邦共和国・イギリスの不和を解消すべく、1626年から27年にかけ何度もイギリスを訪問しています。

《戦争と平和》
1629-30年頃 ロンドン・ナショナル・ギャラリー
《聖ゲオルギウスと竜》
1629-30年頃 ウインザー城 王室美術館
《バンケッティングハウスの天井画》
1630-34年頃 ホワイトホール宮殿

ルーベンスの精力的な努力の結果、1629年イギリスとスペインは友好国として成立。イギリス国王チャールズ一世より人間性を見込まれ、愚意画と天描画を頼まれ、さらには栄誉称号ナイト爵を受け、しばらくイギリスに滞在しますが、翌年の1630年に帰国しました。

この時ルーベンスは53歳。1623年ごろから痛風をわずらっており、大変苦しんでいたそうです。

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